【作家紹介】野村亜矢さん(陶)
3年ぶりの個展に先立ち陶芸家の野村亜矢さんの工房にうかがいました。
愛知県安城市にある工房はお母さまが営む野の花と器の店「野むら」と同じ建物。

広大な庭はうっそうと木々が茂り、住宅街の中にぽつんとここだけが
森のように浮かび上がって、違う時間が流れているようです。
庭を散策しているだけで楽しくて、なかなか建物にたどり着けないくらい。


建物や庭のデザインはお母さまが手がけられたそう。
パワフルでセンス抜群のお母さまにお会いできるのも、工房を訪れる楽しみのひとつです。
もちろんお母さまのお店でも、野村さんの作品をご紹介されています。
さんざん散歩しておしゃべりに花が咲いた後、ようやく工房へ。
野村さんは、手びねりで作品をつくられているのが特徴。
手びねりというのは、電動ろくろを使わず、捏ねた土や
縄状の粘土を使ってかたちづくる方法です。
愛知県は瀬戸や常滑など製陶の産地。
大学で陶芸を学んだ野村さんは、卒業後メーカーに就職し
そこで毎日、電動ろくろを使って器を作る仕事に関わります。
「ある日、ろくろで挽いた器が並んでいる様子を見たとき、自分が引いた器がどれか
他人の器と区別がつかないことに愕然としたんです」
電動ろくろを使うと結局、誰が作ったかわからないようなものになってしまう。
誰にもつくれないものを追求したいと独立後、野村さんは
手びねりにこだわって作陶を始めたのです。
野村さんに手びねりでつくるところを見せていただきました。
まずはボウル。丸めた粘土を台に置いて、




手ろくろを回しながらあっという間に美しい形ができいきました。
さて次は円錐型の花入れ。
途中まではボウルと同じ。
土台を作った後は紐づくりした粘土をぐるぐる巻きながら積み上げていきます。


まるで縄文土器のような素朴な作り方なのに、フォルム感は洗練を極めています。
土の塊が野村さんの手の中に入った瞬間から、むくむく形を帯びていく様子は
マジックを見ているような不思議な光景でした。
まるで土が魂を得て、有機的なものに変身したかと思うほど。
一瞬の無駄も迷いもなく、指と粘土が一体となって動くさまに圧倒されました。
ひとつひとつ異なる作品には、やっぱり魂が宿っているのかもしれないと思ったひととき。
あらためて唯一無二の作品の魅力を感じたのでした。
10月19日からはじまる、3年ぶりの個展はどんな素晴らしい作品が
そろうのでしょうか、期待を超えた展示になりそうですよ。
個展のご紹介→⚫︎
撮影/尾嶝太
